基本情報
「乳搾り、背徳の牛舎(痴漢義父、息子の嫁と・・・」(2003、日本)
監督:後藤大輔(ブラインド・ラブ、言い出しかねて)
脚本:後藤大輔
製作:池島ゆたか
出演:麻木涼子、佐々木ユメカ、中村方隆、なかみつせいじ
公式サイト
http://xcity.jp/shin-toho/ROADSHOW/0308/
今作のDVDです。
ストーリーと映画情報
酪農家の周吉は息子を事故で亡くし、息子の嫁である紀子と二人で暮らしている。一見平穏な暮らしを送るかに見える二人だが、周吉は明け方になるとボケの症状がでてしまい、かつてかわいがっていた牛がまだ生きていると思い込んでしまう。そんな義父のために紀子は、毎朝牛舎で裸に四つん這いになり、死んだ牛、花子になりすます。周吉はその紀子の乳を本物の花子と思い、お乳が出ないことを心配しているのだが・・・
日活ロマンポルノ時代から活躍するベテランピンク監督、後藤大輔監督の奇想天外なインモラル恋愛劇。
ピンク映画について
現在、アメリカで日本のピンク映画の配給業務に携わっている。不勉強であったので、この仕事に関わる以前は、日活ロマンポルノ以外は見た事が無かった。このピンク映画というジャンル、単にエロティックというだけでなく、多種多様な作品が存在する。数回のセックスシーンがあれば、どのような企画でも通ってしまう風通しの良さがあり、それゆえ監督の個性が存分に発揮されている作品が多い。古くは若松孝二や足立正生、現在日本映画界の第一線で活躍する、周防正行や黒沢清もデビュー作をピンク映画で撮っている。新人監督でもデビューしやすく、作家性を存分に発揮できる土壌は今でも健在であり、今日でも個性的な作品が数多く生まれている。
ピンクでしかなし得ない傑作
この「乳搾り、背徳の牛舎」はまさにピンクでしかなし得ない傑作と云える。正直、ファーストシーンをみただけで仰天し、これは傑作だと確信した。まず題材がすごい。嫁が義父のために牛になりすまし、ボケた義父はその嫁を牛だと思い、乳を搾る。一般映画では、まず実現不可能なアイデアだ。不可解かつインモラルな関係ではあるが、二人の間には純愛が存在する。それは他人のモノサシでははかれない類のものだ。ボケた義父を愛する嫁。彼女は義父を悲しませまいと毎朝牛になりすます。朝のみに発症するまだらボケを認識できない義父もまた息子の嫁を愛している。息子はかつて、牛の花子と共に事故で死んだ。のどかな田舎で暮らす二人の世界に通常の社会が入り込んで来た時、二人の関係は崩れ始める。土地の権利書を狙うブローカー、数年前に家出した実の娘が彼らの異常な関係をなじる。しかしたとえ異常であっても嫁の紀子にとっては義父と一緒にいれることが幸せなのだ。正気を取り戻した義父に、牛の泣き真似をしながら肉体関係を迫る圧巻のラストシークエンスでは、いつのまにかその以上な愛の世界に観客は引きずり込まれている。
本来、愛に決まった型は無い。どれだけ異常であってもそれが純愛であれば美しい。昨今の日本映画でこれほど美しい純愛を描いた作品はない。いや日本映画史を振り返ってみても、これほどの強度の純愛を描いた作品が何本あっただろうか。
今作品は日本映画史に残る傑作だ。
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