2007年04月08日

映画レビュー#48「クィーン THE QUEEN」

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基本情報
「クィーン THE QUEEN」(2006、イギリス)
監督:スティーブン・フリアーズ(ヘンダーソン夫人の贈り物、がんばれ、リアム)
脚本:ピーター・モーガン(ラストキング・オブ・スコットランド)
製作:アンディ・ハリース、クリスティーン・ランガン
出演:ヘレン・ミレン(ゴスフォート・パーク、カレンダー・ガールズ)、マイケル・シーン(キングダム・オブ・ヘブン、ジキル&ハイド)、ジェイムズ・クロムウェル(ベイブ)

公式サイト
http://queen-movie.jp/

2006ベネチア国際映画祭正式出品作品、2006アカデミー最優秀主演女優賞受賞(ヘレン・ミレン)


ストーリーと映画情報
1997年8月30日、衝撃的なニュースが世界中を駆け巡った。ダイアナ元イギリス皇太子妃、事故死。チャールズ皇太子との離婚後、精力的なチャリティ活動を行っていたダイアナ元妃の新しい恋を執拗に追いかけるパパラッチとのカーチェイスの末の事故死であった。離婚後、民間人となっていた彼女に対して、王室はコメントをする立場にはないのだが、国民から絶大な支持を受けていたダイアナ元妃の死を無視することは、国民を無視することを同義となってしまう。ダイアナ元妃との確執があったエリザベス女王は、窮地に追い込まれていくが、首相になったばかりのトニー・ブレアは、様々な思惑を抱えながらも、国民と女王の橋渡しをしようと奔走する。
ダイアナ元妃の事故死からの一週間のロイヤル・ファミリーの混乱と人間模様を描いた秀作。

国民のクィーンと国民のプリンセスとの確執
現在もイギリスの女王であられるエリザベス2世は、1953年に即位して以来、「国民に開かれた王室」を目指し(私生活をTVで公開したりもしている)、80歳になった現在も精力的に活動しており、イギリス国民からの信頼も厚い。そんな女王が、国民からの反感を買い、退位に発展するかもしれないほどの窮地に陥いらせた事件がある。そう、ダイアナ元妃の事故死だ。ある意味で、ダイアナ元妃は、イギリス王室史上、最も「開かれた」人物であったかもしれない。派手なドレスを実にまとい、私生活やプライベートな事柄も度々インタビューで語ってもいたし、チャリティー活動なでにも積極的に関わっていた。しかい、その言動は時に王室の威厳や伝統にそぐわないことも度々であった。威厳と伝統を保ちつつ開かれた王室を目指した女王と元妃の間には次第に確執が産まれていった。しかし、そんな彼女は、国民の間には絶大な人気を誇っていた。「人々のプリンセス」ダイアナと「国民のためのクィーン」エリザベス女王との確執。二人の確執と、あの事故はイギリス王室の何を変えたのか。

半旗のユニオン・ジャックと国民葬
すでに民間人となっていたダイアナ元妃の死に関して、王室は公式コメントをしないことも、葬儀を行わないことも王室の伝統から見れば、理にかなったことである。エリザベス女王は、これは民間の出来事であり、王室とは一切関係ない、という台詞を云い、別荘のハルモラル城に閉じこもる。国民からは、元妃の死に対して何もしない王室への非難が出始める。この危機をいち早く感じたのは、まだ就任してまもない若き新首相、トニー・ブレアであった。国民と王室との溝を埋めることによって、国民、王室双方からの支持をとりつけようと画策するブレアは、様々なアプローチを女王に対してかけていく。このブレアと女王のやり取りと心の動き方は、非常に重要だ。伝統に固執する王室に対して、必ずしも賛同していなかったブレアも、女王の心中を察していくにつれ、次第に女王を擁護する立場へと変わっていく。女王もまた国民感情を何とか理解しようと努め、尊厳をそこなわないまま、追悼の意を示す方法を模索する。女王としての立場と孫の母親を失った悲しみをケアする人間としての女王。様々な思惑が交錯する中で、ようやく産まれた妥協点がユニオン・ジャックの半旗国民葬というアイデアだった。バッキンガム宮殿に王室旗ではなく、イギリス国旗が掲げられる、といのは異例の事態である。そして、通常王室の人間を弔う時にしか、この宮殿に半旗が掲げられることはない。ダイアナ元妃の死に対するこの半旗は、異例の事が二重に重なっている。そして国葬ではなく、国民葬として彼女の葬儀が行われた。ブレアが声明の際に云った「人々のプリンセス」の言葉通り、彼女の死は王室だけでなく、国民全体の悲しみであのだから、ユニオン・ジャックと国民葬というアイデアは結果的にこの処置はよかったのかもしれない。しかし、この処置は、伝統と国民感情の狭間でゆれ動いたエリザベス女王の深い葛藤の産物でもある。なぜか王室旗に包まれるダイアナ元妃の棺は、女王にはその光景がどのように写ったのだろう。

そしてヘレン・ミレンの演技がとにかく素晴らしい。彼女の演技だけで観に行く価値がある。

※それにしても、イギリス王室は日本の天皇家とは大違いだ。正確には、それらを巡る両国の社会の意識が違うと云うべきか。わずか10年前の出来事をこのような形で映画にできてしまう、イギリスに対し、日本ではいまだに天皇を巡るあらゆる重要な言説はタブー扱いだ。日本では、戦後60年経っても今だに天皇に戦争責任があったかどうかを議論することすらできない。
ロシアの映画監督に任せておいていいのか。いい加減、日本人の手で描かれるべき問題だ。

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posted by hotaka at 05:06| Comment(0) | TrackBack(20) | 映画レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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